セミの分布調査         和歌山市での調査結果



目的、方法 :その地域のセミの抜け殻をなるべく多く採集して、生息しているセミの種類とその数を調べ、その地域の環境を推測して、測定する



セミの成虫は、飛んでくることがあるので、正確にはその地域に住んでいたとはいえないので、幼虫がすんでいることにより生息していると判断するので、抜け殻を調べることが必要となる。

地域の環境推定の方法 :その地域に成育しているセミの種類やおよその数を知り、 そのセミの分布によって環境を推定する。

セミの分布の要因として、土壌の水分条件や温度が決定するという説

幼虫や成虫が汁を吸うのに好みの木があり、その木の分布によってセミの分布も決定している(セミの樹種嗜好性:米澤信道)という説

があるが主な要因としては後者の方が正しいように考えられる。

セミの種類のよって好みの木があるとするなら、好みの木がなければ、セミは分布しないからである。その要因にセミ自身の温度適正等により、セミの分布が定まってきたと考えられる。
温暖化によりセミの好む樹種の北上化あるいは、
人間による植栽によりクマゼミの分布も結果的に北上していると考えられる。以下に示すセミの生息特長によりその地の環境を推測する。

各セミの特徴  幼虫の生息状況など 資料は主にwikipedia
  
クマゼミ
結果的に市街地に分布、街路樹、公園、堤防などに多い。幼虫は、暖かくて乾いた環境を好み、温暖化により分布が北上したり市街地に住むようになったという説や幼虫や成虫が汁を吸うのに好みの木があり、その木の分布によってクマゼミの分布も広がってきたという説がある。森林などのやや湿った土にはすまない。
クマゼミは九州などの温暖な地域に多いセミで、本州では珍しいセミであったが、近年は頻繁に確認されるようになった。また1990年代頃から関東地方や北陸地方でクマゼミ生息地の東進・北上が報告されているクマゼミは南方系のセミであるため、温暖な西日本以南の地域にしか生息できない。そのため、西日本から東海地方の太平洋側に多数生息しているが、山陰地方以北の日本海側や内陸部では冬の寒さにより生息数が少なくなり、北日本には生息しない。

アブラゼミ

日本(北海道から九州、屋久島)、朝鮮半島、中国北部に分布する。 人里から山地まで幅広く生息し、都市部や果樹園でも多く見ることができる。アブラゼミは幼虫・成虫とも、クマゼミやミンミンゼミと比べると湿度のやや高い環境を好むという仮説がある。このため、都市化の進んだ地域ではヒートアイランド現象による乾燥化によってアブラゼミにとっては非常に生息しにくい環境となっており、乾燥に強い種類のセミが優勢となっている。東京都心部ではミンミンゼミに、大阪市などの西日本ではクマゼミにほぼ完全に置き換わっている。「アブラゼミ、クマゼミはそれぞれ好む木、嫌いな木があり(樹種嗜好性)乾湿によってきまるものではない」との説もある。成虫はサクラ、ナシ、リンゴなどバラ科樹木に多い。成虫も幼虫もこれらの木に口吻を差しこんで樹液を吸う。そのため、ナシやリンゴについては害虫として扱われることもある。

ミンミンゼミ  
ミンミンゼミは、アブラゼミやクマゼミと比べると暑さに弱い。日本国内では北海道南部から九州、対馬、甑島列島に分布する。東日本では平地の森林に生息し、都市部の緑地などでも多いが、西日本では都市部にはあまり生息しておらず、やや標高が高い山地を好んで生息している。成虫は7月-9月上旬頃に発生し、サクラ、ケヤキ、アオギリなどの木によく止まる。

このセミはアブラゼミやニイニイゼミなどとは違い、ヒグラシと同じく森林性であるが、ミンミンゼミの幼虫は比較的乾燥した土中を好み、成虫はケヤキやサクラなどの樹木を好む。ヒートアイランド現象によって乾燥化が進んでいる東京都心部は、ミンミンゼミの幼虫の成育に好ましく、またケヤキなどの街路樹も多いので成虫となったミンミンゼミにとっても生活しやすい環境である。さらに、北東気流(やませ)の影響で夏に曇りがちの涼しい天候となりやすい東京や仙台の気候も、暑さに弱いこのセミの生息数増加に大きく影響している。北東気流の影響を受けない長野でもミンミンゼミは多いが、長野のような比較的涼しい夏の気候が合っているためにミンミンゼミ生息域が多い。

ニイニイゼミ

ニイニイゼミとその近縁種の抜け殻は小さくて丸っこく、全身に泥をかぶっているので、他のセミの抜け殻と容易に区別がつく。また、他種に比べて木の幹や根元などの低い場所に多い。北海道から九州・対馬・沖縄本島以北の南西諸島、台湾・中国本土・朝鮮半島まで分布する。

ツクツクボウシ

北海道からトカラ列島・横当島までの日本列島、日本以外では朝鮮半島、中国、台湾まで、東アジアに広く分布する。

平地から山地まで、森林に幅広く生息する。地域によっては市街地でも比較的普通に発生するが、基本的にはヒグラシに準じて森林性である。成虫は特に好む樹種はなく、ヒノキ、クヌギ、カキ、アカメガシワなどいろいろな木に止まる。警戒心が強く動きも素早く、クマゼミやアブラゼミに比べて捕獲が難しい。


土壌の乾湿と樹種嗜好性     京都産業大学附属高等学校  米澤信道
セミの樹種嗜好性の概要

    各セミの樹種嗜好性は、樹種ごとに、 セミ殻がつく割合・程度で示している。 本調査は京都市街に於いて、多くの樹種が見られ、 セミも4種以上が見られる場所のデータを参照して行ったものである。 したがって、樹種が少なく、セミも1〜3種しかみられないようなところでは、 選択の余地がなく、かなり異なる結果も出ていることを、断わっておきたい。 また、周辺の状況にも影響を受ける。 例えば同じケヤキ群でも、 周囲が スダジイスギヒノキなど クマゼミの嫌いな樹種が多いところでは、 クマゼミの割合は60〜20%ぐらいに下がることがある。 そして、ニイニイゼミが少ないながら見られることもある。

    クマゼミは、 落葉広葉樹の ケヤキエノキポプラボダイジュ に対してセミ種構成で90%以上占める強い樹種嗜好性を示し、 ムクノキアキニレトウカエデマテバシイ などに50%以上のやや強い樹種嗜好性を示す。 クマゼミが好む木は、 アブラゼミに比べ、かなり少ない。 京都や大阪の市街地で、 クマゼミの割合が高いのは、 市街地には、ケヤキをはじめ クマゼミが好む樹種が多く植栽されているからにほかならない。 文献などで、センダンは、 クマゼミが好む樹種にあげられているが、 実際には脱皮殻はほとんどつかず、むしろ嫌いな樹種であることが判明した。

    アブラゼミは多様な樹種につく。 広葉樹の スダジイカキウメチシャノキソメイヨシノ、 針葉樹の スギツガモミノキゴヨウマツメタセコイア などにセミ種構成で80%以上占める強い樹種嗜好性を示した。 ムクノキアキニレトウカエデ などは40~50%の クマゼミと同程度かやや小さい樹種嗜好性を示した。

    ニイニイゼミは、 キンモクセイに対してセミ種構成で90%占める最も高い樹種嗜好性を示し、 常緑樹の ウバメガシクスノキアカギサンゴジュ、 針葉樹の ヒマラヤスギゴヨウマツヒノキモミノキスギ などにもついている。

    ツクツクボウシは、 ヒノキに対してセミ種構成で28%を占める樹種嗜好性を示し、 スギサンゴジュアカギモミノキ など限られた樹種に少数つく。



    ニイニイゼミツクツクボウシが好む樹種からなる樹木群、緑地は、 市街地からしだいに姿を消しており、 このことが、ニイニイゼミツクツクボウシがあまり見られない原因となっている。

   
京都産業大学附属高等学校
米澤信道



大阪府「身近な生き物調査  セミの分布調査」   16年度〜19年度調査結果

4ヵ年の調査でわかったこと   考察1のみ表示

(考察1)
大阪府内で7割、大阪市内で9割がクマゼミ!
これからもクマゼミは増えていくのでしょうか。 

 ・校区内の「セミのぬけがら」を調べて、私たちの身の回りの環境を考える
  「おおさか身近な生きもの調査」を始めてから4年が経過し、その間およそ
  12万個のぬけがらが調べられました。


 ・府域でも比較的見つかりやすい6種類のセミのぬけがらを調査対象として
  いますが、特に市街地部においては「クマゼミ」ばかりが増えている、といっ
  た状況が数字でも表われています(表1)。


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表1 大阪府内におけるセミの生息分布割合(大阪市内とその他)

エリア別 最多種 平均種数 クマゼミ アブラゼミ その他
大阪市内 クマゼミ 2.29 88.6% 7.6% 3.7%
大阪市以外 クマゼミ 3.35 66.1% 29.8% 4.1%
合計(府域全域) クマゼミ 3.19 69.2% 26.7% 4.0%



※調査対象種数は6種。種数が多いほど、多様な環境があると考えられる。

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  クマゼミは本州より温暖な九州地方をもともとの生息域としていたようです
 が、大阪より南の和歌山県では「アブラゼミ」の方が多いようです。また、本
 来の生 息域である九州地方でも「クマゼミ」ばかりでなく「アブラゼミ」も多く
 生息しています。
  これは単に温暖な気候ということだけでなく、大阪では、他の地域と比べて
 クマゼミにとって生息し易く、アブラゼミや他のセミにとって生息しにくい環境が
 増えているという事情が考えられます。